幻想廃墟の裏庭空間

「そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?」

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

寝不足で安らかな寝息を立てている私の横で。AM4:00に設定したアラームが、部屋の中に、静かに響く。 ピアノの色は音階を一段ずつ慎重に昇り、それをささやかなコーラスが支えている。やがて頂上まで登ったピアノは足取り軽くステップを踏むように踊り。そし…

月:黄:白星軌道

白星軌道と言う名前の部屋を開くと、果てしない暗闇の内側に、ある煌めきが走っている。喫茶店の彼女はそんな事を話し、物語を朗読をするように、こう続けた。僕たちは、いつも旅をしている。宇宙を走り、星を渡り、草原と海を駆け抜け、波の中に拡散し、彩…

枕の中に顔を埋めてから、くるりと仰向けになり、白い天井を眺めている。淡い壁紙の模様と揺れるカーテン、ささやかな風の薫りが頬を撫でる。手のひらを上げ、指先をじっと眺める。私の意思に応じて指先は動く。そのまま人差し指で首筋をなでると微かな不快…

蒼い夜と小さな星灯りの下、ベンチに座り、身体を伸ばして、ため息を一つ。足元で白い猫がのんびりと足下を八の字に歩いていたので、何となく拾って喉や頭をなでてあげると、彼はごろごらと不思議な音を出しながら膝の上で丸くなる。公園に吹く、なだらかな…

自分自身で完結する生き方、と言うのはできるのかな?うーん。そうねえ。人間一人で生きるには力は弱く。余りにも周りは人であふれているし。人間一人で生きていけるほど、価値観も技術も多様化しているし。じゃあ、人間はこれから先、生きていけると思う?…

潜むものにとって、春とは、命の事を指していた。そよ風に揺らめく草木の光沢や、その柔らかな絨毯の上を白い兎がはねる姿。木の上で猿が実を食べ、捨てた種に蟻の隊列が近づいてゆく。その蟻を蒼い鳥が嘴で摘まんで巣に持ち帰り、巣の中の雛に与えている。…

それは、森に佇む村を眺めていた。そこでは小規模ながらも様々な人が住み、種をまき、施設を作る。斧を手に取り木立を切り、薪にして火にくべる。潜むものは、それをぼんやりと眺めている。子どもが怪我をして泣くときも、軍隊が食料を求めてきたときも。腰…

地下道に入ると照明が暗くなり、乾いた埃の匂いが鼻をくすぐる。その感覚は誰しもが感じていることだと思う。だけど、私はその感想を聴いたことがない。ひょっとすると、あのときに感じる違和感は私だけが感じているものなのだろうか、と人の波を泳ぎながら…

手のひらを太陽に透かして、空を掴もうと、手を握る。本当は意味のない動作だけれど。それは子供の頃に抱いた小さな思い出に結びつき、様々な理由。たとえば、社会性、関係性、効率、政治、予測から導き出される前の発端に結びつく。 眼をつむり、最初の理由…

ねえ、そこにいる私。と彼女は寂しげに問いかけた。 好きなものの事、本当に好き?

吸血鬼に関して

ねえ、貴女は吸血鬼なんだよね。そうですけれど。吸血鬼ってどういうものなの?うーん。人間ではないけれど元人間か、人間の原型を持つもので。人間に惹かれているけれど、恨んでもいる。面白がりつつ、怖がっている。食べ物でありながら、天敵でもあり。親…

大きな影は、地面を泳ぐ。草原を涼風のような速さで渡り、切り立った崖に至ればその複雑な地形に合わせて身体を歪ませ、地面の底にある穴の中に入り込む。光の差し込まない、冷めた、色のない空間に安堵して欠伸をする。闇の中は安住の地。ここでは自分と同…

眠れない、でも起きていたくもない。澱んだ気分のまま、何もかもが通り過ぎてゆく。 溜息をついて、瞼を閉じる。ああ、暗闇の中に何かが沈んでいるような気がする。でもそれが何かは、解らない。諦観か、疲労か、もっと深いところに沈んだ怒りや、喜びを求め…

チャイムが一つ。お邪魔します、と後輩さん。曲線が目に写るような綺麗な礼をして髪が揺らぐ。お邪魔されます。とフランクな礼を返し、部屋の奥に案内する。ゲームとおやつが山積していた部屋は磨かれて、光沢を返している。我ながら一日でよくやった、と思…

今日も機械的な音声が何かを伝えている。白線の内側に、次の駅は、忘れ物のないよう、ご注意ください。毎日聞くことになる、実体のない声。ブラーのかかった音、劣化して震える音、ソナーみたいな通知音。どこに設置されているかも解らないスピーカーから響…

そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?

感想:鉄血のオルフェンズ最終話

レビュー、評価、感想の方向性に関して。ネタバレですよ。

創作想起:世界汚染

「遺跡」と呼ばれるものには、いくつかの種類がある。ひとつは、廃墟。かつてここに国があった事を示す、ささやかな墓標。ひとつは、旧世界。この世界が現れる前に地中に埋まったと言われる旧世界(Res)への入り口。ひとつは、世界樹。誰も知らない種族が作っ…

朽ちかけた廃墟に私は住んでいる。ここは何もない。好きな人も、趣味や誰かに伝えるための言葉も、得る物もない。朽ち果てて捨てられた願いしかない。音楽も絵も、興味を引くものも、好きだけれど、どこにもたどり着かない。何処かにたどり着きたいのか。青…