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幻想廃墟の裏庭空間

「そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?」

今日も機械的な音声が何かを伝えている。
白線の内側に、次の駅は、忘れ物のないよう、ご注意ください。
毎日聞くことになる、実体のない声。
ブラーのかかった音、劣化して震える音、ソナーみたいな通知音。
どこに設置されているかも解らないスピーカーから響き。
当たり前に過ぎ去ってゆく。
家にいる時も、仕事をしているときも響いているのだろうな、と思う。
無数の靴の音と一緒に、何万、何十万と続いている声。

しかし、今日はその声が聞こえなかった。
誰もが日常を通り過ぎる中、それが途絶えている。
警告なく駅に入り、停車する地下鉄。
ビープ音もなく開く扉、機械的に閉じて、始動する。
次の駅は示されない。間もなく、というアナウンスもない。
ただ、何処かへと進み続けている。
この電車は何処に行くのだろう、と思う。
扉の上にある電光掲示板は暗いまま、中づりの広告だけが明るく揺らいでいる。
進み続ける地下鉄は風景も変わらず、埃の香りが漂い、落ちると死ぬのは確実で。
電波も届かない。
どうすることも出来ないまま、走る音と振動が続いている。
お腹がすいて喉が渇いても止まらない。
私は今、どこにいるのだろう?