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幻想廃墟の裏庭空間

「そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?」

月:黄:白星軌道

白星軌道と言う名前の部屋を開くと、果てしない暗闇の内側に、ある煌めきが走っている。
喫茶店の彼女はそんな事を話し、物語を朗読をするように、こう続けた。

僕たちは、いつも旅をしている。
宇宙を走り、星を渡り、草原と海を駆け抜け、波の中に拡散し、彩に音もなく返される。
山並みを超えて、道ゆく無数の人を過ぎ去り、渡り鳥を追い越して、彩りに溢れた世界を、何の関係性をもてずに走り去ってゆくばかり。
たまに、誰かに触れてみたい、と思う。
でも、僕たちが身体を持てばすぐに自壊するだろうし、もし、何かに触れたとしても、次の瞬間には相手を壊してしまう。
声を出そうにも、声より早く過ぎ去り。
何かが意味を生み出した時にはもう、僕らはそこにいない。

僕たちの生はただ、通り過ぎることしか出来ない。
いつか、足を止めて、誰かと話すことが出来るだろうか。
大気圏の向こう側でみたことや、信じられないような様々な星の風景。
広い空間を旅することの寂しさや、様々な秘匿、それらを通り過ぎてしまう悲しさについて。

その扉の中にいる光は、今もそんなことを思いながら、広い宇宙を旅している。
彼らの旅に終わりはなく、そして語られることもない。
それでも、蒼い空の遥か先で、今も果てしない旅を続けている。

彼は今頃、一体何を見ているのかな。
そう懐かしそうに言いながら、彼女は天窓に広がる蒼穹を、眩しそうに仰ぎ見た。