幻想廃墟の裏庭空間

「そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?」

創作想起:疾走

置いて行かれて、土をみる。

このままではいけない、と思う。
でも何が足りないのか、うまく言葉にできないまま。
心が枯れ葉みたいに騒いで転がり、落ち着かない。
失われようとしているものばかり思考に入り。
焦りと不安が擦り切れた背中を押す。
心を決める。
追いかけてやる。
戦闘機がミサイルの引く白い死に追いかけられるように。
フルスロットルで道を走る。
それに、けして捕まらないように。
風景が線のように流れて、地平線は果てまで続き。
その果ての果てに目標がいるはずだ。
やりたい事は決まっている。
空は何も変わらず果てしない蒼が続いている。
綺麗だ、と思う。
あそこに行きたい。
はるか遠くにある雲を突き抜けて、燃え尽きる事が出来れば良いのに。
そのまま、心だけ星の向こう側へ。
燃料が乏しいまま。でも走ることは終わらない。
高度が堕ちて、地上が近づくにつれ。
警告音は強くなり、自分の速さと周りの速さが可視化される。
もう、何かに激突して全てが千切れてしまうまで走り続けようか。
更に速度を上げる。息が切れて倒れそうな体を前のめりに。
どうせもう、帰るところなど、ないのだから。
空は蒼く、木々は陽の光を映して煌めいている。
湖の上を糸を引くように波を立て。
単発のエンジンは熱量に悲鳴を上げて。
大きく息を吸うため顔を上げる。
このまま、翼を相手にぶつけて、お互いに墜落するようにして転がり込み。
いつか、呆然と佇むそれに、笑いかけてやる。
おいついてやったぞ、と。
それはもう、誇らしげに。

 

 

 

 

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