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幻想廃墟の裏庭空間

「そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?」

創作想起:史片

とある図書室の中から大きな歴史の本をとりだして、開いてみる。

その本の中には
、暮れなずむ蒼い夜とそこに沈んだひとつの街。
眠るように佇むその街に、やがてひとつの電灯が光をつけた。

その光は街の中心から始まり、道の輪郭を辿るように点々と輪郭を表し、やがて電飾にあふれた都市の全景を映し出す。
煌めくような灰色の都市風景に、車や人、電車が行き交い、人々がそれぞれの方向へ向かっていく。
沢山のシステム、機械、経済、天候、人生が詰まった世界を遠目に眺める。
誰かが泣いている路地の先で誰かが談笑し。
事故が起きて音が響いたかと想えば自動車工場から新らしい車が出荷する。
誰かが葬列に参加する同じ時間に誰かは生まれ。
同じ時間に無数の事が起きている。
目まぐるしく変わる世界。
平穏や退屈の隣で誰かが一生を賭けた事業を興し、また何てこともなくすれ違う。
歴史を矮小化することは簡単だけど、全容は誰にもわからないまま。

沢山の人たちがそれぞれの思惑と現実に出会い、何処かへと突き進み。
何時しかその都市も終わりを迎え、崩れていく。
在るものが壊れて行くように、風が吹いたか雷が落ちたか、猫に食べられたか、変質したのか、自重で内側から崩れたか、それとも進みすぎて別のものになったのか。
都市それぞれの終わりに向かい、かつてのものは当たり前に失われ。
そこにいた沢山の人はいなくなり、新しい人が集まってまた新しいものが作られる。
継続しているのか途絶しているのか。
残酷なのか祝福なのか。
恐らく当事者しか解らない。
ただ、時間はマイペースに進んでいく。
そこに物語や起伏はなく、生も死も、滅びも再生も、飄々と通り過ぎてゆく。
何を騙るでもなく、ただ事実だけを見せていくその歴史の本を見返して。
ちょっと淡白すぎじゃない?、と呟いてみる。
すると次のページに私の言葉が乗せられて。
本を見ている私の姿が写り込んでいた。
本の中に映った私は、私と同じように動き。
少し怖くなって本を閉じると、何かが閉じた音がして。
図書室の外には、暗闇がひっそりと続いていた。