幻想廃墟の裏庭空間

「そこに真っ白な空白があると、何かを書きたくならない?」

日常と非日常、現実と異世界と言うのはさして遠い所ではないと感じるの。
そんな事を彼女は言う。
例えば普段歩く道端からマンホールを降りれば、大抵の人にとっては未知が広がっている。

思い切って別のバスに乗ってみたり、知らないお店に入ったり、全く縁のない知識について学んでみると、新しい世界が広がるかもしれない。それこそ、大人の世界と子供の世界が違うように。
確かに面白そう、と思って。視点を動かして世界の覗き方を変えてみる。
昨日から今日を見つめ、一行後から一ページ前を読んで、いつもの扉を開くと人の身体より大きな蜘蛛が覗いていて。
毛の生えた、硬質の足が耳をかすめ、透明な毒が滴る器官が目の前に突きつけられる。
そんな想像は無意味だけどね。と彼女は言う。
そうかな、と彼女は返す。
なにが起きるか解らない、と言うのは面白いじゃない、と彼女は微笑みながら珈琲を飲んでいた。
私はその通り、と頷き。
私はそうでもないと思う、と少し苦い顔をする。
私は前後の文脈が繋がってないのは気持ち悪い。と髪を揺らし。
でも行間を読むことが物語を楽しむ秘訣だと思う、と眼鏡を直し。
そうだけど限界と言うものがある、と私は蒼い裸眼で相手を糾弾した。
相手は笑い。
相手はナイフを突き立てて、心臓から紅いものがあふれてきて。
相手はささやかな握手を求めた。
どことどこが繋がっていて、どことどこがつながっていないのだろう。
パズルのピースのように拡散された世界を覗く。
万華鏡みたいな世界が怖くなって、自分の喉にナイフを突き立てる。
そして、おいしいチーズフォンデュを食べてから、秘蔵のワインを喉を鳴らして飲み込んだ。
私は彼女と楽しいゲームの話をして。
ずっと語らい。
もう何も認識したくない、と屋上から落ちて。
好きなあの人に抱きついて。
あんな事をしなければ良かったと始まりを悔やみ。
終わってみれば楽しかった、と思える。と風の吹く丘の上でほほえみ。
紅い血が流れて死んだとしても、別の行にいる私は生きていることに気づく
収束に向かっているはずなのに、順番を間違えただけで総てが狂っていく。
殺して欲しい、と泣きついて。
尊敬する先輩と肩を並べ、アイスを食べて。
今日も今日とて、私は日常を生きている。

 

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