潜むものにとって、春とは、命の事を指していた。そよ風に揺らめく草木の光沢や、その柔らかな絨毯の上を白い兎がはねる姿。木の上で猿が実を食べ、捨てた種に蟻の隊列が近づいてゆく。その蟻を蒼い鳥が嘴で摘まんで巣に持ち帰り、巣の中の雛に与えている。…
それは、森に佇む村を眺めていた。そこでは小規模ながらも様々な人が住み、種をまき、施設を作る。斧を手に取り木立を切り、薪にして火にくべる。潜むものは、それをぼんやりと眺めている。子どもが怪我をして泣くときも、軍隊が食料を求めてきたときも。腰…
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